2. 1)変容ステージ理論
一人の喫煙者が継続的な禁煙に至るまでの全過程を5つのステージに分け、それぞれのステージに適したカウンセリングを行うのが変容ステージ理論である。5つのステージとは、
1. 前熟考期 行動変容の準備が全くない状態
2. 熟考期 行動変容について考えている状態
3. 準備期 行動変容の準備をしている状態
4. 実行期 行動を変えつつある状態
5. 維持期 ライフスタイルに組み込まれるまで、獲得した新しい行動を続けている状態
である。各ステージに適したカウンセリング技法については後述する。
ここで、依存性物質であるニコチンは少しでも摂り入れると常習喫煙に戻りやすいこと、また喫煙はたとえ少量でも健康上の害は大きいことから、禁煙カウンセリングで「実行」すべき行動は「タバコを完全に止める(一本も吸わない)」ことである。このことはカウンセリングの対象者がしばしば誤解しているので、早い段階から何度も確認しておこう。
なお、喫煙者は1から5までのステージを必ずしも一気に駆け上がるとは限らない。時に「足踏み」や「逆戻り」も繰り返しながら、最終的に真の禁煙者に近づいて行く。実行期や維持期に入ってからの「逆戻り」は「再発」(禁煙カウンセリングでは「再喫煙」)と呼ばれる。ただし、前熟考期まで「逆戻り」してしまうことは比較的少ないとされている(逆戻り現象の15%程度)。
