1)ニコチンパッチ

ニコチンパッチは1998年12月に承認された経皮吸収ニコチン製剤である。国内で発売されている医療用医薬品のニコチンパッチは、ニコチネル®TTS®30、20、10の3 種である。標準的使用方法は、ニコチネル®TTS®30 を1日1枚ずつ4週間使用後、20 を2週間、10 を2週間使用する。原則として朝起床後に、上腕や背部皮膚に貼付する。使用期間は10週間を超えないようにされているが、精神疾患患者などの禁煙困難例では長期処方を必要とする場合もある。ニコチネル®TTS®30から開始することが多いが、喫煙本数が少ない場合などは低用量から始める方が頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、動悸、冷汗などのニコチン過量症状を予防することができる。また、不整脈や虚血性心疾患などのニコチンにより病状悪化が懸念される患者に対しても低用量から始めるほうが安全である(文献5)。
 有害事象としては、貼付部位の皮膚炎がある。毎回貼付部位を変えることで避けられる場合もあるが、改善しない場合は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤およびステロイド外用剤を使用すると軽減できることが多い。水疱形成など症状が強く出現する場合は使用中止とする。不眠も頻度が高い。ニコチンパッチを夕方や夜間に貼り替えている場合は朝起床時に貼り替えるようにし、朝貼り替えているにもかかわらず不眠がみられる場合は就寝前にはがすよう助言する。もし、使用中にニコチン過量症状がみられた場合は、パッチの裏にフィルム等を貼って用量を減少させるか、パッチをはがすようにする。
 禁忌は、非喫煙者、妊婦、授乳婦、不安定狭心症、発症後3 ヵ月以内の心筋梗塞、重篤な不整脈、経皮的冠動脈形成術直後、冠動脈バイパス術直後、脳血管障害回復初期、本剤の成分に過敏症の既往歴がある場合等である。
 2008年4月に承認された一般用医薬品のニコチンパッチは医療用と同様の製品だが、使用制限が加えられている。医療用では24時間貼付できるが、一般用では16時間貼付して就寝時にははがす。また、医療用の高用量製剤(ニコチネル®TTS®30)は最大血中濃度(Cmax)および最大血中濃度到達時間(Tmax)ともに一般用より大きい。医療用の中用量製剤(ニコチネル®TTS®20)は一般用の高用量製剤(ニコチネル®パッチ20)と同じ製品だが、他の高用量製剤(シガノン®CQ1)のCmaxおよびTmaxもほぼ同じであり、臨床効果は2種とも同等と考えられる(図表5)。

 


引用文献
5) 中村正和: 虚血性心疾患の禁煙指導. 心臓, 33:615-617, 2001.


ページトップへ戻る