精神疾患患者の禁煙治療も基本的には非精神疾患患者と同じである。喫煙の有無を聞き、吸っている場合には禁煙を勧める。ただし、外来患者では精神症状が落ち着いているときに開始する。精神障害者の禁煙支援のキーワードは「信頼関係」「こまめな診察」「長期のフォロー」「精神科医との連携」「薬物療法」「家族・周囲のサポート」「環境」が重要なポイントである(図表14)。以下に概説する。
1)「信頼関係」・・・ラポールを作る
精神疾患患者の禁煙治療にあたってはまず患者と信頼関係を築くことが特に重要である。相手を受け止め、相手との間に信頼関係を作り出すことを“ラポールを作る”というが、これがあると以後の禁煙治療が非常にスムーズにいき、再喫煙した時の受診にもつながる。入室時より「あなたの禁煙を一所懸命応援します」ということを、言葉だけではなく、目や表情などもフル動員して全身で伝えることが短時間でラポールを作るのに有効である。
2)「こまめな診察」
オーストラリアの統合失調症患者のためのガイドラインでは禁煙開始後3日以内の受診を勧めてい(文献1)。精神疾患患者は最初の3日を乗り切れない者が多い。この3日は肝要で、精神症状の変化・うつ症状の有無をチェックの上、禁煙状況はどうであったか、使用薬剤の副作用の有無などを聞く。禁煙できている場合には、困ったこと・つらかったことはなかったか、あった場合にはそれをどうやって乗り越えたかを聞き、思いきりほめる。また、禁煙してよかったことをできるだけ多く聞き出し、ともに喜ぶ。禁煙できていない場合には何が阻害要因であったか、その阻害要因を取り除くにはどうしたらよいかを一緒に考えていく。
その後1ヵ月は1週間毎、半年までは1ヵ月毎とこまめに見ていくことが望ましい。
禁煙の2週後位から精神科使用薬剤の血中濃度が上がる可能性があり、精神症状の変化・うつ症状の有無の他、この点にも留意が必要である(図表11)。
精神疾患患者は、禁煙治療期間中もニコチン依存症管理料の5回に限らず、精神疾患の治療の一環として保険でフォローができる。精神科基礎疾患の再診の機会を活用して禁煙治療のフォローをすることを推奨する。